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ブランディングは何から始める?目的と現状を整理する7つの問い

こんにちは、株式会社ebanatです。

Webサイトを新しくしたい。ロゴが今の会社に合わなくなった。採用発信を見直したい。こうした話が社内に出ると、制作会社を探したり、参考デザインを集めたりするところから動きたくなるものです。目に見えるものは話しやすく、予定や予算にも落とし込みやすいからです。

けれども、制作物を先に決めると、途中で「何を伝えるサイトなのか」「そもそもロゴを変える必要があるのか」という問いに戻ることがあります。経営者は将来像を伝えたい一方、営業は商品の分かりやすさを求め、採用担当は社風を見せたい。どれも間違いではないため、上位の目的がないと判断が好みに寄ってしまいます。

中小企業がブランディングを始めるとき、最初に必要なのは完成形を決めることではありません。なぜ今取り組むのか、何を変えて何を残したいのか、何をブランドとして考え、どこへ向かいたいのか。自社の現在地を確かめ、いったん言葉にすることです。

この記事では、一般的な工程を順番に網羅するのではなく、経営者・経営幹部・後継者が話し合うための問いを置いていきます。

この記事で整理するのは、大きく4つです。「なぜ今取り組むのか」「現在どんな問題と課題があるのか」「何をブランドとして考えるのか」「これからどこへ向かいたいのか」。7つの問いを通じて、この4つを現時点の仮置きとして言葉にしていきます。

すぐに正解を出す必要はありません。読み終えたときに4つの仮置きを持ち帰れれば、自社の価値を社内外から探る次の対話へ進めます。

中小企業のブランディングは、制作物より目的の整理から始める

ブランディングの意味や、ロゴだけではない理由は、中小企業のブランディングと企業らしさを解説した記事で触れました。ここから先は「自社の場合」に焦点を移します。最初に見るのは、理想的なブランド像ではなく、いま社内で起きている変化や違和感です。

ebanatでは、ブランディングの入口は企業ごとに異なると考えています。特許庁の中小企業のためのデザイン経営ハンドブックでも、すべての会社が同じ方法に従うのではなく、自社に合った入口から実践する考え方が示されています。入口を選ぶには、流行している施策ではなく、自社が向き合う理由をつかむ必要があります。

制作に入る前に共有したい6つの整理項目

ブランド・マネージャー認定協会は、ブランディングを現場で使える実践の「型」として体系化しています。そのBtoBワークで扱われる骨格を土台に、ebanatでは中小企業が話し合いやすい言葉へ置き換え、制作前に次の6つを整理します。ブランド・マネージャー協会のカリキュラムも、理論を職場で実践できる方法へ落とし込む考え方を紹介しています。

  • 会社の歴史と経営理念
  • 今起きている問題
  • これから取り組む課題
  • 取り組みに期待する変化
  • 今回ブランドとして考える対象
  • これから向かいたい方向

これは、順番どおりに答えを埋めるためのチェックリストではありません。ebanatでは、経営者の意図、現場で起きていること、過去から続く価値、これから向かう方向を行き来しながら、対話で整理していきます。すべてをこの時点で確定する必要はありません。大切なのは、制作に入る前に「何について考える必要があるか」を共有しておくことです。

問い1 なぜ「今」取り組もうとしているのか

「ブランディングが必要だと思った理由は何ですか」と尋ねると、「競合もやっているから」「サイトが古いから」といった答えが出やすいでしょう。それはきっかけではありますが、目的はもう一段奥にあります。

たとえば、サイトの古さが気になった背景には、現在の主力事業が載っておらず、商談のたびに営業担当者が説明を補っている状況があるかもしれません。ロゴを変えたい背景には、事業承継後に目指す姿と、先代から続く会社の印象をどうつなぐかという迷いがあり得ます。採用発信を強めたい背景には、応募数だけでなく、入社後の認識のずれが続いているという問題が隠れていることもあります。

「今」を具体化するには、直近一年ほどで増えた会話を振り返ってみます。

  • 顧客や取引先から、以前より説明を求められるようになったことは何か
  • 社員同士で答えが分かれるようになった質問は何か
  • 新事業、事業承継、採用難、顧客層の変化など、以前と違う条件は何か
  • 放置した場合、二、三年後にどんなずれが大きくなりそうか

ここで出てくるのは、「ブランドを良くしたい」という抽象的な希望ではなく、いま立ち止まる理由です。理由が複数ある場合は、全部を同時に解こうとせず、今回もっとも話し合う必要があるものを一つ選ぶと焦点が定まります。

問い2 何が変われば、取り組んだ意味があったと言えるのか

ブランディングに取り組む理由を整理したら、次に「どんな変化が起きれば意味があったと言えるか」を考えます。これは、取り組みに期待する効果を言葉にする作業です。

目的は「Webサイトを公開する」「新しいロゴを完成させる」ではなく、その後に起きてほしい変化で表します。「売上を上げる」「採用を成功させる」だけでは、まだ距離があります。売上や応募数は、商品力、価格、営業活動、市況など多くの要因で動くため、ブランディングだけの結果とは限らないからです。

そこで、最終成果へ至る手前にある認識や行動を見ます。たとえば、「初回商談の前に顧客が対応範囲を理解し、基本説明に使う時間が減る」「社員が新事業と既存事業のつながりを共通の軸で説明できる」「応募者が待遇だけでなく、仕事で大切にする姿勢について質問する」といった変化です。

Web、ロゴ、採用発信、SNS、AIは、この変化に近づくための手段になり得ます。顧客の誤解を減らすならWebや営業資料、社内の判断をそろえるなら対話や共有資料、まだ接点のない相手へ仕事の姿勢を見せるならSNSというように、目的から選びます。AIも、発信自体を目的にせず、過去資料の整理や表現案の比較を助ける道具として位置づけます。この関係はAI時代のブランディングを扱った記事でも紹介しています。

「それを導入したい」から始める代わりに、「先ほど置いた変化に近づくために、この手段は何を担うのか」と問い直します。役割を説明できなければ、まだ決める時期ではない可能性があります。

現状整理では、受け継いだものと今の問題を同じ地図に置く

現在地は、問題点を並べるだけでは捉えられません。中小企業には、長年続けてきた判断、顧客との関係、現場の工夫があります。変えたい状態と同時に、変化の中でも受け継ぎたいものを見ることで、刷新が単なる過去の否定にならずに済みます。

ebanatでは、過去を懐かしむためではなく、未来へ持っていく材料を見つけるために現状を振り返ります。特許庁のデザイン経営コンパスも、自社の取組の現状把握と、未来に向けた取組の検討を支援するツールとして公開されています。未来と現在を切り離さない点は、ブランディングの入口でも参考になります。

問い3 歴史・理念・転機の中で、何が受け継がれているのか

会社の歴史を年表にすることが目的ではありません。見たいのは、節目で何を選び、その選択にどんな考えが表れていたかです。創業、主力事業の変更、大口顧客との出会い、危機からの立て直し、世代交代、新市場への進出。転機では、会社が優先してきたものが見えやすくなります。

経営理念も、掲示された言葉だけで判断しません。理念が作られた背景や、実際の意思決定に使われた場面、日常から離れてしまった場面を聞きます。

古い会社案内、社内報、写真、創業者や長く在籍する社員の話をテーブルに置くと、会話が具体的になります。成功談だけでなく、苦しい局面で守った品質や失敗後に残った習慣にも、その会社の判断が表れます。

問いは、「昔から変わらない強みは何か」だけでは足りません。「事業の形が変わっても残った姿勢は何か」「次の世代にも渡したいのは何か」と聞きます。答えはこの先の価値探索で確かめるため、ここでは受け継がれているものの候補を見つけます。

問い4 現状の問題と、これから取り組む課題は何か

問題と課題を分けるのは、用語を覚えるためではありません。起きている事実と、これから選ぶ行動を混ぜないためです。「採用サイトが古い」は観察できる状態です。しかし、それだけで全面リニューアルが答えとは決まりません。本当の問題は、仕事内容が変わったのに説明が更新されていないことかもしれず、取り組む課題は「現場の仕事と採用時の説明をそろえること」と置けます。

観察した事実・問題背景として考えられることこれから取り組む課題の仮置き
商談のたびに会社説明を補っているWebの内容が現在の事業とずれている今の事業構成と顧客への約束を整理し、説明をそろえる
社員ごとに自社の説明が異なる経営の方向性が共通言語になっていない経営と現場が使える判断軸を言葉にする
応募はあるが、入社後の認識差が大きい採用時に良い面だけを伝えている実際の仕事と価値観が伝わる接点を整える
新事業が既存顧客に理解されない既存事業との関係を説明できていない変わらない考えと新しい方向を一つの物語で結ぶ

この表の右端は確定事項ではありません。同じ問題でも、会社が向かう方向によって取り組む課題は変わるからです。会議では「何が悪いか」と人を責めるのではなく、「どの場面で、誰に、どんなずれが起きたか」を事実として集めます。

問題を解消することだけが目的になると、古い状態を新しくする話に閉じがちです。「今の不便を直す」と「未来に必要な土台をつくる」の両方があるかを確認すると、課題の置き方に奥行きが出ます。

残すものは、未来でも働くかどうかで考える

残すものは、古いか新しいかではなく、これから向かう顧客や市場でも意味を持つかで考えます。たとえば、営業地域を広げる会社が「地域密着」という言葉をそのまま使わなくても、顧客の現場へ足を運び、個別事情を理解してから提案する姿勢は受け継げます。

この段階で決め切る必要はありません。「私たちはこれまで○○を大切にしてきた。これからも残したい候補は□□である」と置く程度で十分です。何を残すかの判断基準、何を手放すか、変えることとの優先順位は、価値を探索した後の段階で掘り下げます。

今回、何をブランドとして考えるのかを決める

「自社をブランディングする」と言っても、話している範囲が人によって違うことがあります。経営者は企業全体を考えているのに、担当者は一つの製品の販売促進を想定している。そのままでは、集める情報も判断基準も広がり続けます。

ebanatでは、最初にブランドの主対象を定め、その対象が周囲へどう影響するかを見ます。J-Net21のコーポレートブランディング解説でも、自社の存在意義や目的を明らかにすることに加え、商品・サービスだけでなく、従業員への方針もブランディングにつながると説明されています。接点が広いからこそ、今回の中心を決めておく必要があります。

問い5 企業・事業・製品/サービスのどこを主対象にするのか

企業全体を対象にするなら、複数事業に共通する存在理由や、社内外へ示す会社の方向が論点になります。事業ブランドなら、企業全体との関係を保ちながら、その事業がどの市場で何を担うかを考えます。製品・サービスなら、具体的な利用者や選択場面に近づきます。

採用がきっかけでも、「採用」を独立したブランド階層として扱うのではなく、企業ブランドや組織文化のどこを中心に扱うかを考えます。応募者に伝える会社像と実際の働き方が離れているなら、企業全体の課題かもしれません。

範囲を選ぶときは、次の三つを順に確認すると話しやすくなります。

  1. いま最も大きな認識のずれは、企業全体・事業・製品/サービスのどこで起きているか
  2. 採用がテーマなら、企業ブランドや組織文化の何を見直す必要があるか
  3. 今回の人数・時間・意思決定権で、責任を持って扱える範囲はどこまでか

社員によって会社の将来像が違うなら、採用サイトだけの話では収まりません。一方、企業理念は共有できていて特定サービスの説明だけが曖昧なら、対象をサービスに絞ったほうが対話を深めやすくなります。

主対象と、影響を確認する周辺を分ける

対象を絞ることは、ほかを無視することではありません。「中心」と「影響を確認する周辺」を分けることです。中心が企業ブランドなら、製品や採用にどう表れるかを見る。中心が製品・サービスなら、企業として約束していることと矛盾しないかを見る。境界を言葉にすると、話が広がったときに戻る場所ができます。

この時点で持ち帰りたいのは、「今回は○○を主対象にする。△△への影響も確認するが、□□の詳細は今回決めない」という一文です。決めない範囲まで示しておくと、会議のたびに論点が増えるのを防げます。

対象が定まると、Webやロゴの案も好みだけでは選ばずに済みます。制作前にすべてを確定する必要はありませんが、「今回の課題に応えているか」「主対象の価値を伝えられるか」という基準を持てます。コーポレートサイトとブランディングの関係を扱った記事で紹介している情報設計や表現の検討は、この土台ができてから具体化します。

方向を定め、4つの仮置きから価値探索へ進む

現在地と対象が見えてきたら、これから向かう方向を重ねます。未来の向きがなければ、何を変え、何を残すかを選びにくいからです。ただし、ここで精密な市場戦略まで完成させるわけではありません。今回は方向の重心を決め、4つの仮置きとして持ち帰ります。

問い6 これから、どの顧客・市場・事業へ向かいたいのか

「若い層へ」「全国へ」「高付加価値へ」といった短い言葉だけでは、社内の想像がそろわないことがあります。顧客については、年齢や業種だけでなく、どんな状況で自社を必要とする相手へ向かいたいかを考えます。市場については、地域を広げたいのか、既存市場の中で担う役割を変えたいのかを分けます。

方向性は、現在の顧客と新しい顧客、現在の商品・サービスと新しい商品・サービスの組み合わせで考えると整理しやすくなります。理論名を覚えるより、次の四つを自社の言葉で比べてみます。

  • 今の顧客に、今の価値をより深く届ける
  • 今の顧客に、新しい商品・サービスを広げる
  • 新しい顧客に、今ある価値を届ける
  • 新しい顧客に、新しい商品・サービスを届ける

実際には、きれいに一つへ分かれるとは限りません。それでも「今回どこに重心を置くのか」を考えるだけで、ブランディングの方向は見えやすくなります。既存顧客との関係を深めたい会社と、新しい市場へ進みたい会社では、確かめる価値も伝える順序も違うからです。

「これまで主に○○へ提供してきたが、今後は△△の状況にある顧客とも関係をつくりたい」「既存事業で培った□□を起点に、新しいサービスへ広げたい」という程度の言葉で構いません。未来の方向を考えるときは、新しい顧客やサービスに合わせるだけでなく、過去から何を次へ残すのかも同時に考えます。ここではその必要性に気づき、候補を置くところまでで十分です。

問い7 4つの仮置きを、いまの言葉で整理する

前半で見た6つの整理項目を、次の対話へ持ち帰りやすい4つの仮置きへ圧縮します。歴史・理念と期待する変化も、「なぜ取り組むのか」と「どこへ向かうのか」の背景として残ります。

これは社外へ公開するコピーでも、本格的な市場仮説でもありません。次の探索へ進むための仮置きです。空欄や複数案が残っても構いません。

  1. なぜ取り組むのか:いま○○という変化や違和感があり、△△という状態を目指したい
  2. 問題と課題:現在○○が起きており、まず△△に取り組む必要がある
  3. 何を対象にするのか:今回は○○を中心に扱い、△△への影響も確認する
  4. どこへ向かうのか:これまでの○○を残しながら、今後は△△へ向かいたい

書けない部分があれば、「なぜ書けないのか」も材料になります。経営者と現場で認識が違うのか、顧客の見方を知らないのか、将来の事業方針が未決定なのか。曖昧さの種類が分かると、誰と何を話すべきかが見えてきます。

期待する変化も、「誰に」「どんな理解や行動が生まれれば」「前より良いと言えるか」という形で仮置きします。たとえば、営業が同じ文章を暗唱できることではなく、顧客の状況に合わせながら共通の軸で説明できること。採用なら応募数だけでなく、面接で会社の考え方に関する質問が生まれることです。観察できる言葉になっていれば、ここでは十分です。

まだ答えのない部分を、次のステップで探しに行く

4つを一枚にすると、根拠が足りない部分も見えてきます。「残したい技術力」は、どの仕事に表れているのか。「向かいたい顧客」は、何を求めているのか。「取り組む課題」は、経営者だけでなく社員も同じように感じているのか。ここで無理に答えを確定させないことが、次の探索を深くします。

次のステップでは、4つの方向へ問いを開きます。

  • 自社:歴史や実績の中に、繰り返し提供できているものは何か
  • 顧客:顧客は何を求め、どの場面で自社の存在を価値と感じているのか
  • 社員:現場の判断や工夫のうち、会社らしさを支えているものは何か
  • 競合:似た選択肢がある中で、自社はどこが同じで、どこに違いの可能性があるのか

この段階で作るのは、価値の答えではなく、価値を探しに行くための地図です。4つの仮置きと、まだ根拠のない言葉を持って、次は社内外の声と事実へ向かいます。

まとめ

ブランディングを始めるとき、最初に決めるのはWebやロゴではありません。まず仮置きしたいのは、次の4つです。

  • なぜ今取り組むのか
  • 現在の問題と、取り組む課題は何か
  • 何をブランドとして考えるのか
  • これからどこへ向かいたいのか

ここまで整理できれば、次に「自社にはどんな価値があるのか」「顧客は何を求めているのか」を探る準備が整います。社内だけで整理しようとすると、問題と課題が混ざったり、話すたびに対象が広がったり、立場によって見えている会社像がずれたりすることがあります。そんなときは、第三者と一緒に整理するのも一つの方法です。整理を一緒に進める相手が必要なときは、相談してみることもできます。

この記事を書いた人

株式会社ebanat
代表取締役 田辺 正太

ファッション業界でブランドづくりに携わった後、家業である中小企業の経営へ。会社の中にある価値や想いを見つめ直し、企業理念、サービス、Webなどを一つずつ整えてきました。その経験から、まだ言葉になっていない企業の“らしさ”を見つけ、伝わる形にしていく株式会社ebanatを設立。ブランド戦略を起点に、Web、マーケティング、AI・デジタル活用まで一緒に考えています。

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